そもそも、なぜ、人は『タバコを吸いたい』と思うのか?
肉体的な要因や精神的な要因など具体的に挙げれば様々な要因があるが、
最たるものは『ニコチンに依存するメカニズム』であるという事を知っておいた方が良いと思われる。
脳内で分泌されるホルモンは人体に様々な影響を与えている。
『集中力が増す』『自信や意欲が湧いてくる』などの快感ホルモンと呼ばれる覚せい作用のある『ドーパミン』、
『興奮を抑える』『満足感を覚える』などの不快感ホルモンと呼ばれる抑制作用のある『ノルアドレナリン』、
心身をリラックスさせるなどの精神安定作用のある『セロトニン』、
人は過度に興奮したり、不安を覚えたりした際には
これらのホルモンを分泌させて心身を安定させようとする。
そしてどのホルモンをどの程度分泌させようかと決定付ける、
ここで最も知っておかなければならない最重要脳内伝達物質がある。
これを『アセチルコリン』と言う。
人体では通常、ホルモンを分泌させる必要が生じた際には、
このアセチルコリンが別名レセプターとも呼ばれる神経伝達物質を受ける受容体と結合して
脳内でホルモンを分泌させる。
だが、タバコに含まれるニコチンはこのアセチルコリンと構造が非常に良く似ていると言われており、
更には本来のアセチルコリンとは比にならない程の働きをしてしまうのが、
非常に厄介な点なのである。
タバコの煙を吸引すると、5〜7秒と言う非常に短い時間で
ニコチンが脳内に達し、
アセチルコリンを押しのけ、凄まじい勢いでレセプターと結合していく。
アセチルコリンは通常、分解酵素によってすぐ消滅する事によりレセプターとの結合はすぐに解けるのだが、
ニコチンの場合、消滅する事無くアセチルコリンに比して長時間結合し続けるという現象を起こし、
脳が『大量のホルモンが必要な状態なのか』と勘違いをして
主として快楽を伴うドーパミンや、精神を安定させ落ち着かせようとするセロトニンなどの脳内ホルモンを
大量に分泌させてしまうのである。
タバコを吸って約7〜10秒後に体感する
『快楽』や『精神的な安定』のような感覚はこう言った仕組みで発生する。
『タバコを吸いたくなる衝動』には様々な種類があると言われているが、
その中でも最も強いものは
『ニコチンの減少に伴う禁断症状』であると言われている。
ニコチンは脳内に入ると概ね30〜45分程度で半分くらいに減少し、
その後ゆっくりと時間をかけて消滅していくと言われている。
ニコチンが減少し、大量に分泌されていた脳内ホルモンが分泌しなくなると
その時まで味わっていた「気持ちいい」という感覚が消えていく。
通常、ホルモンの分泌が必要な際には
人体ではその都度アセチルコリンが作られ、レセプターに向かわせようとするが、
一度、ニコチンによってアセチルコリンの生産を怠ける事を覚えてしまった人体は
アセチルコリンを苦労して生産するよりも
手っ取り早くまたアセチルコリン以上に働くニコチンを求めるよう
脳に対して強く要請し始めるのである。
大抵の人はこの強烈なニコチンに対する欲求に抗えず、
安易にまたニコチンを補給し、
アセチルコリンの生産を怠けさせ、
ニコチンが脳内で様々な脳内ホルモンを異常に分泌させようとレセプターに働きかけ、
そのニコチンが自らが自然消滅するまで
脳内ホルモンを異常分泌させるようなイタズラをし続けるような状態にしてしまう。
●地獄の72時間
ニコチンは30〜45分程度で半分くらいに減少し、
それ以降、体内から全く検出されなくなる程完全消滅するのに
個人差はあれど概ね72時間ほどの時間を要すると言われている。
ニコチンが体内に残っている間は、
体が脳内伝達をさせようとする時、アセチルコリンの生産を怠けようとするのと同時に
残っているニコチンに全部仕事をさせようとする傾向が強くなり、
足りなくなったニコチンの補給を渇望して
『強烈な欲求=ニコチンの減少による禁断症状』を発生させる。
禁煙をしようと試みる人にとって最も恐るべき敵はこの『ニコチンの減少による禁断症状』であり、
多くの人が禁煙を決めたにも関わらず、
72時間以内にリタイアしてしまうのはこの為である。
逆を言えば、禁煙を始めた時にこの最もつらい
最初の72時間=ニコチンが体内から完全に無くなるまでの時間
さえクリアしてしまえば、後は体内でアセチルコリンを生産する機能が徐々に回復していき、
それ以後は余程の精神的な抑圧やストレスでもない限りぐっと
禁煙は楽になるはずである。
「一本くらいならいいだろう」と言って我慢しきれずに吸ってしまうと、
そこからニコチンが体内から完全になくなるまでの
『地獄の72時間』がまた復活してしまうと言う点にも留意しておかなければならない。
上述したが、禁煙中に「たった一本」とは言え、タバコを吸ってしまうと
ニコチンが体内から完全になくなるまでの
『地獄の72時間』がリスタート(=リセット)してしまい、
「タバコを吸いたいという欲求」がより強くなる事で禁煙がより難しくなってしまう。
しかし、分かっていながらその強烈な欲求に抗えない、抗えそうにない場合は
具体的にどう対処すれば良いのか?
その応急措置とも言える方法をいくつか挙げていきたいと思う。
1.15秒数える(15秒間タバコを吸う以外の『何か』をやって時間稼ぎをする)
タレントのタモリこと森田一義氏はかつて日に60本を数えるほどのヘビースモーカーだったが、
『吸いたくなったら15秒数える』という、
いたってシンプルなルール(=禁煙方法)を守り抜いて禁煙に成功したと言われている。
本人曰く、「タバコを吸いたいと言う欲求は長くとも15秒以上続く事は無い」との事らしく、
ニコチンに対する最も強い欲求は15秒間ぐっとこらえると、
必ず抑えられると言う強い意志と信念に基づいての禁煙方法であると言える。
これを応用して、『タバコを吸いたいと言う強い欲求』が生じた時には
15秒以上時間をかけて歯を磨いたり、水を飲んだりするなどして
『何か別の事』(15秒経過するまでの時間稼ぎ)をして、
吸いたいと言う気持ちを紛らわせるのも効果的かも知れない。
体内がアセチルコリンを生産する事を怠けた上で、
ニコチンを強く要求してくる時間は15秒以上断続的には続かないと言う説があるが、
その説に基づいた方法であるとするならば、とても理に適った禁煙方法であると言えるのではなかろうか。
2.タバコ水の臭いを嗅ぐ
吸い殻を水につけておくと見るもおぞましい色に変色した
猛烈な異臭のするタバコ水(=毒水)ができる。
ミミズにかけると激しく収縮を繰り返してのた打ち回った挙句に死に至るほどの毒性の強い水であり、
殺虫剤にも使用される事もあると言うが、
吸いたくなった時に
(約15秒間)このタバコ水の臭いを嗅ぐだけでも
タバコを吸いたいと言う欲求はある程度抑えられると言われている。
但し、誤飲すれば死亡する恐れもある為、
特に乳幼児が近くにいるような環境でこの方法を試す場合には、
誤飲する恐れのある対象が絶対に手の届かない所に保管するなど細心の注意が必要である。
人は、ニコチンの摂取によってアセチルコリンの生産能力を低下させる。
アセチルコリンはコリンという物質によって作られている。
主として牛や豚のレバーや大豆製品などに多く含まれているのだが、
それらに含まれたコリンの多くは脳関門によって阻まれてしまい、
アセチルコリンとなって脳内で伝達物質として働く事は少ないとも言われている。
脳関門とは、人体の中で最も重要な脳を
毒物などから守る為にある関所のような役割を担っており、
アセチルコリンの原料とも言えるコリンと言えども、
簡単には通過できない仕組みになっている。
だが、コリンの含有量が他の食品に比べてずば抜けて多い
卵(の黄身の部分)から作られる『卵黄コリン』と呼ばれる種類のコリンに至っては、
他の種類のコリンと比べて脳関門を簡単に通過できるようであり、
そのうちの多くがアセチルコリンとなって
脳内伝達の役割を担うと言うデータも存在している。
また、しじみや海苔などに多く含まれるビタミンB12や、
緑茶や納豆などに多く含まれる葉酸などと一緒に摂取した時には、
卵黄コリンとの間に相乗効果が発生して、
より効率良くアセチルコリンが生産されると言われている。
卵黄コリンとビタミンB12を掛け合わせたサプリ等は、
アセチルコリンを多く生産させるだけでなく、
それに対応するレセプターの数も増やし、
脳内ホルモンの分泌を活性化させて
アルツハイマー病を予防したり、改善させるという効果も認められている。
ニコチンによって低下してしまったアセチルコリンの生産能力を回復させるには、
卵黄コリン(卵)+ビタミンB12+葉酸を多く含んだ食品を
バランスよく摂取し、自ら吸わないのは言うまでもないが、
なるべく他人のタバコの煙(副流煙)も吸い込まないようにする事が、
大切なのではないかと思われる。
アセチルコリンとそれに対応するレセプターの数を増やし、
脳内ホルモンの分泌量を高める、
ないしタバコを吸う前の元の健康だった頃の量に回復させる為の食事一例を挙げるとすれば、
卵ごはん(卵黄コリン)+納豆(葉酸)+海苔(ビタミンB12)+しじみの味噌汁(ビタミンB12)+緑茶(葉酸)
で納豆巻きにするような食事などが
脱ニコチン依存の体を作るには良いのではないかと思われる。
日本人最大の死因は『癌』であり、
その癌の中でも最も多くの人命を奪っているのが『肺癌』である。
タバコにおける人体に与える害の多さは今更言うまでもないかも知れないが、
その害の中でも最たるものはこの『肺癌』を誘発させる事であると言える。
また、自ら吸うタバコの煙を主流煙と言うのに対し、
そうでないタバコの煙、
即ち直接吸われる事無くタバコの先から立ち上る煙を副流煙と言う。
副流煙とは主流煙に比してニコチンやタールなどの有害物質を多く含み、
かつ主流煙が酸性なのに対し、副流煙はアルカリ性である為、
より目や鼻の粘膜を刺激すると言われている。
と言える程、自分にも他人にも有害な行為である。
それも自殺は自殺でも『肺癌の末期症状』と言う助かる見込みがないとの
『死刑の宣告』とも言えるような余命宣告を受けた後に、
残る僅かな余命を癌の進行による激痛で
もがき苦しみのた打ち回った挙句に衰弱して死んでいくという、最悪な死に方での自殺方法である。
医師から「あなたの命はもってあと半年です」などの癌の末期症状による余命宣告を受けると、
あとは延命治療を受けるかどうかを尋ねられる。
ただ、延命治療を受けたからと言って通常、宣告を受けた期間以上生きる事はできず、
延命治療中には癌の進行による激痛が生じ、心身ともに衰弱し、自ら命を絶つ者も少なくないという。
将来そうなりたくない、そんな死に方はしたくない。
ないし、近くにいる煙を吸わせてしまっている人間に、そんな思いはさせたくないと思うのであれば、
喫煙すると言う行為がどんな行為なのかを真摯に受け止め、真剣に禁煙について考えるべきである。
最後に、何がどうなったら禁煙成功なのかを総括したい。
喫煙する習慣=ニコチン依存症ないしニコチン中毒とは、
本来なら体内で自力で生産されるべき『アセチルコリン』によって、
ドーパミン(気分を高揚させるホルモン)や、
セロトニン(気分を落ち着かせるホルモン)などの脳内ホルモンを分泌させるべき状態を、
無理矢理ニコチンという劇薬(毒)を用いて
本来なら分泌されるべきではない
有り得ないような大量の脳内ホルモンを分泌させ続けているような状態の事を言う。
ここで禁煙成功をどう定義するかと問われれば、
低下(退化)させてしまっているアセチルコリンの生産能力を正常な元の状態に戻し、
ニコチンに頼ることなく、
脳内ホルモンを自力で正常に分泌できるような状態にし、
それを維持し続ける事なのである。
体内から(72時間が経過して)ニコチンが抜けきっても、
アセチルコリンの生産量が正常に戻るまでは
ニコチンが欲しいと言う欲求は消えないかもしれないが、
そこで卵黄コリンとビタミンB12や葉酸などを多く含んだ健康的な食事を摂り続け、
アセチルコリンの生産能力を元の正常な状態にまで回復させ、
タバコの煙から隔離された環境(副流煙によるニコチン摂取も×)を
どれだけ作る事ができるか?と言う事が、
禁煙成功の鍵になるのかも知れない。
この文章を読まれた方のうち、一人でも多くの方に
アセチルコリンを自力で十分に生産できるような健康的で理想的な体を取り戻し、
ニコチンがもたらす地獄と悪夢から解放され、
禁煙成功を勝ち取った先にあるであろう、
『健康的で幸せと喜びに満ち溢れた充実した毎日』を是非とも送って頂きたい。
このサイトが提供する知識や内容に感銘を覚えて頂けたのであれば、
是非ともより多くの人にこのサイトを広めて頂きたい。(リンクフリーです)
当サイトが、タバコに起因する肺癌によって、もがき苦しみのた打ち回った挙句に衰弱死するような
悲惨な運命を辿る人間を一人でも多く減らす事ができれば
これに勝る喜びはないと考えている次第である。
関連サイト>>健康食で長生きラボ